メノポハンドは、「更年期の手」を意味する英語「メノポーザルハンドmenopausal hand」を略した言葉です。2022年に日本手外科学会が命名をしました。閉経前後の40~60歳代の女性に多い手指の痛みや変形、しびれなどの症状のことを指した言葉です。
40歳を過ぎたころでは、閉経はまだ起きる様子はありませんが、実はこのころから女性ホルモン「エストロゲン」の変動は大きくなってきています。そのため、閉経前の時期から手の障害を自覚することが多くなってきます。
また、エストロゲンの急激な減少が起こるのは、更年期だけではありません。たとえば産後の授乳期には、妊娠中に高かったエストロゲン値が急激に低下し元に戻ります。このため、手指の痛みやこわばりは、更年期だけでなく産後の授乳期などにも起こります。
エストロゲンは関節の「滑膜」を柔軟に保ち、腱や腱鞘を保護しています。エストロゲンが急激に減少すると、腱・腱鞘や関節が腫れてくるため、手指が痛み動かしにくくなり、こわばります。
同時期に生じる手の疾患には、関節リウマチがあります。多くの場合、症状やX線検査所見、血液検査からリウマチとメノポハンドは容易に区別をつけることは可能です。
その結果、メノポハンドでは、多くの医療機関では「歳のせいだからしかたない」とか「手の使い過ぎ」「いつかおさまる」といったことを言われ十分な治療を受けることができないのが現状です。
しかし、更年期の手指の痛みは、放っておくと7~10年で指の変形に進行する可能性があります。そのため、早期に治療を開始したり、日常生活での動作改善が必要となります。
そこで、「メノポハンド」かな?と思ったら、整形外科を受診してください。
整形外科の中でも手外科専門医に受診することが最も良い選択となります。
治療方法
- 塗布薬を用いてのマッサージ、ストレッチ
- リハビリテーション リハビリスタッフと相談の上、手指の使い方指導をいたします。また、腱鞘炎、手のしびれなどには超音波治療も有効となります。
- 手指の変形に対して再生医療(PFC-FD関節注射)
PFC-FD注射は再生医療治療です。自分の血液から抽出した成長因子を傷んだ関節部に注射をすることで関節軟骨の修復を促します。
- ホルモン補充療法
更年期症状に対して婦人科で行われる治療となります。
手指の変形が進む前であれば手指の症状が改善されているケースがあります。
5、エクオール摂取
体内でエストロゲンとよく似た作用を持つエクオールを補うことが、予防につながるというデータが出ています。エストロゲン受容体にはαとβがあり、βの受容体は骨や関節周囲の滑膜に多いとわかってきました。エクオールはβ受容体と合体しやすい性質があるため、関節の症状改善に作用すると考えられます。
6、腱鞘炎、関節変形、手指のしびれが日常生活において症状がひどい場合にはそれぞれに対して手術を行います。
手術内容に関しては、コラムでそれぞれの症状、手術に対して説明してありますので、参考にしてください。
<エストロゲンの変動に伴って起こる女性の手指の病気>
・ばね指 母指、中指、薬指に多く、指の曲げ伸ばしでばねのように引っかかる
・ヘバーデン結節 指の第1関節に腫れと痛みが起きてやがて変形する
・ブシャール結節 指の第2関節に腫れと痛みが起きてやがて変形する
・手根管症候群 手首あたりで正中神経が圧迫され母指から中指までのしびれが生じる
・母指CM関節症 母指の根元が痛くて、ペットボトルのふたが開けられない
・ドケルバン病 手首の母指側が腫れて痛む