ばね指ってどんな病気?
指にはどの指にも指を曲げる屈筋腱があります。そして、その腱の動きを効率よくするため、腱鞘というトンネルがあり、このトンネルの中を腱が通っています。
手指を曲げ伸ばしするときには、腱鞘の中を腱が往復するように動きます。この部分の通過障害による炎症を腱鞘炎といいます。
手の腱鞘が何らかの原因でむくんで厚くなったり硬くなったりすると、腱鞘とその中を通っている屈筋腱がこすれ合い、炎症のために腫れてきます。このため、腫れた部分が引っかかって、指を伸ばそうと強い力を加えると「カクン」と跳ねるようになります。このように発症するのがばね指です。
通過障害が起こる原因は、腱鞘が肥厚(むくみなどのために厚みが増すこと)したり硬くなることによります。更年期に女性ホルモンが低下してくると起きやすくなりますし、パソコン作業や楽器の演奏などで指をよく使う人、そのほか、関節リウマチ、透析などもばね指発症のリスクを高めます。
ばね指の保存治療
ばね指の治療は初期の段階では、手指の安静と手指のストレッチです。ストレッチでは、腱鞘に負荷をかけないように第1関節、第2関節の伸展・屈曲運動を行っていきます。
なかなか痛みが取れない場合には、痛みの原因となっている腱鞘部分へのステロイド注射を行います。腱鞘の狭窄の程度のひどくない方は注射により完全に治る場合もあります。
しかし、ステロイド注射は炎症を抑える代わりに、腱の組織を傷めてしまいます。そのため、腱鞘への注射は最小限にとどめるようしなければなりません。
ばね指、どんな時に手術する?
ばね指にはこんな時には早く手術を行ったほうがよい状態の時があります。
1、指が引っ掛かって伸ばすときにかなり痛みを伴うとき
ばね指の際には、手指の第2関節や親指の第1関節が痛くて受診される方がいます。そういった方は関節が悪いのではないかと心配されて受診されます。ばね指では動作時に腱が腱鞘というトンネルに引っ掛かるため、関節部分に強い圧力がかかります。そのため、慢性化した腱鞘炎が、第2関節の変形性関節症(ブシャール結節)の原因のひとつとなりうる可能性があるため、こういった場合には放置はオススメしません。ばね指なのに関節痛が強い場合、早期の手術をお勧めします。
2、第二関節(PIP関節)がかたくなって動きが鈍くなった時
指が完全に伸ばせなくなったり、曲げてもしっかりと曲がらなくなった時、そういった状態は腱鞘というトンネルがひどく狭くなってしまい腱のとおりがかなり悪くなった状態です。このままですと関節は動く範囲が限られるため、だんだん関節自体が硬くなってしまい拘縮という状態となります。拘縮は関節周りの組織が硬くなって自分の力では動かせない状態です。この場合、腱鞘をひらく手術を行っても、手術後に関節をほぐすリハビリが必要となり、いわゆる厄介な状態となります。以前は引っ掛かっていたけど、その後、関節を動かさずにいたら引っ掛かりはよくなったけど、関節が動かなくなったというのはよくない状態なのです。
関節が硬くなる前に手術を受けるのがベストですが、関節が硬くなった場合、できる限り早期に手術を受けリハビリを行っていただくことで改善しますので、手術・リハビリを十分にできる施設で手術を受けることをお勧めします。
指の障害は生活の質に直結します。手術は局所麻酔で5分程度です。手指の障害でお困りの方、手外科専門医のいる当院でご相談ください。