女性が更年期を迎えると指先の関節が痛くなったり、腫れてきたりします。
そういった方の多くが、一般の整形外科を受診してみると
どうしようもない
そのうちに治る
と言われ、ほぼあきらめの気持ちとなって当院を受診されます。
そういった患者さんの多くは、 ”このまま放っておいたら指はどんどん変形していくんじゃないか?“と心配されています。
更年期からの手の変形で代表的なものには
第1関節が変形する“へバーデン結節”
第2関節が変形する“ブシャール結節”
親指の根元の関節が変形する“母指CM関節症”
以上が挙げられます。
今回はヘバーデン結節、ブシャール結節に焦点をあててお話をします。
上の写真はヘバーデン結節の画像です。第1関節が変形して、関節が腫れています。レントゲンでは関節の隙間はなくなり、骨棘という骨のとげが横方向に出っ張った状態となっています。
上の写真はブシャール結節の方の画像です。第2関節が腫れて出っ張った状態となっています。レントゲンでは関節の隙間がなくなり、関節にずれが出ています。
へバーデン結節、ブシャール結節どちらにおいても曲げ伸ばしの時に関節が痛くなり、関節が十分に曲がられなくなってしまいます。
関節変形の原因はよく分かっていませんが、更年期に指の変形が急に進行することから女性ホルモンとの関係が注目されていいます。
女性ホルモン(エストロゲン)は、体の様々な部分にあるエストロゲン受容体にくっつく事で様々な作用をもたらします。
整形外科分野に限定してお話しますと、女性ホルモン(エストロゲン)は関節軟骨、腱や腱鞘の保護作用があります。また、エストロゲンは骨の新陳代謝にも関与しています。女性ホルモンが十分にある状態で骨・関節は健康な状態を保つことができます。
ところが更年期となると、骨や関節を守ってくれる女性ホルモンが減少するため骨がもろくなったり、関節が炎症を起こして腫れたり変形が出てきたりします。こういった時期に一般の整形外科に受診すると最初にお話したように
加齢性変化です
どうしようもない
そのうちに治る
と言われてしまい痛み止めで様子をみましょうとなってしまいます。では、症状を緩和したり、予防出来るくすりはないのでしょうか?
現在、注目されているのが、「エクオールサプリメント」です。
納豆や豆乳などの大豆食品を食べると、そこに含まれるイソフラボンが腸内細菌で代謝され、エクオールに変化します。エクオールは女性ホルモンと似た分子構造なので、関節を健康に保つ女性ホルモンと同様の効果が期待出来ます。
エクオールは腸内細菌で大豆イソフラボンが代謝されて出来ますが、この腸内細菌をもっている人は、日本人の50%程度とされています。
自分の体が大豆を摂取することでエクオールを産生できるのかできないかはエクオール検査で調べることができます。当院では、尿検査を用いたエクオールチェック( SOY check )を行っています。
その結果、腸内細菌を持っている人には積極的に大豆製品の接種をお勧めします。尿中エクオールレベルの低い方にはエクオールサプリメントの接種をお勧めします。病院からの処方薬としてのエクオールはありませんので、ご了承ください。
エクオールサプリメントを摂取した人と、そうでない人の手の症状を比較した研究が行われ、エクオールを3ヶ月間摂取した人は、痛みなどの症状が明らかに少なかったとの結果が手外科の学会で報告されています。ヘバーデン結節など、手の変形性関節症の予防につながるようなものは今までありませんでした。まだ長期成績は出ていませんが、このエクオールサプリメントは、予防効果も含めて期待出来るのではないかと思います。手指の関節の痛みや腫れでお悩みの方は、一度相談にお越しください。